タイ市場への進出を検討されている日本企業の皆様へ、極めて重要な「実務上の変化」をお伝えしなければなりません。
2026年1月1日より、タイ政府は「1,500バーツ以下の少額輸入に対する免税措置」を完全に撤廃することを決定しました。
これまで、多くの日本企業が「まずは日本からの直送(越境EC)で様子を見る」という手法を取ってきましたが、そのモデルは2026年を境に、事実上の終焉を迎えます。本記事では、タイ現地で運営実務を担う「店主 白井」の視点から、この法改正がもたらすリアルな影響と、日本企業が取るべき現実的な解決策を解説します。
2026年1月1日、タイのECは「全件課税」の時代へ
これまでは1,500バーツ(約6,500円)以下の商品は関税・VAT(付加価値税)が免除されてきました。しかし、今後は「1バーツから」すべての輸入商品に課税されます。
法改正による具体的な変更点
- 課税対象:1バーツから全件課税へ
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2026年1月1日より、これまで1,500バーツ以下の小口輸入に認められていた免税ルールが完全になくなります。これにより、輸入金額がいくらであっても、すべての商品に例外なく「関税」と「VAT(付加価値税)」がかかることになります。
- コスト増と価格戦略:利益維持には25〜30%の値上げが不可欠
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2026年からは、今までのVAT(7%)に加えて、商品の種類に応じた「輸入関税(一般的に10〜20%)」が上乗せされます。ここで注意したいのは、税金がかかるのは商品代金だけではないという点です。「国際送料」も含めた合計金額に対して、関税とVATがダブルで計算されます。
そのため、単に増税分を価格に乗せるだけでは利益が残りません。販売価格を上げれば、その分プラットフォームに支払う「販売手数料」の金額も増えてしまうからです。 結果として、これまでと同じ利益を確保するためには、販売価格を全体で25〜30%ほど引き上げざるを得ない状況になります。これにより、日本からの直送商品は、現地に在庫を持っているライバル商品に対して、価格面で非常に厳しい戦いを強いられることになります。
- プラットフォーム側の対応:自動徴収システムの強制適用
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LazadaやShopeeなどの大手プラットフォームは、タイ政府の指示を受け、すでに税金を自動的に集める仕組みを整えています。2025年から始まったVAT(付加価値税)に続き、2026年1月からは関税についても、「購入される時に自動計算され、売上金からそのまま差し引かれる」というルールがすべての取引で強制的に始まります。
これにより、販売者が「関税は購入者に払ってもらう(DDU)」といった設定を選ぶことは、実質的にできなくなります。 あらかじめ正確な税率を計算して価格を決めておかないと、入金される時に関税分が自分の利益から勝手に引かれてしまい、売れば売るほど赤字になるという非常に危険な状態になってしまいます。
この新制度の導入は、日本からの越境ECビジネスに二重の打撃を与えます。一つは、複雑な関税計算と自動徴収により実質的な手取り額が見えにくくなる「収益構造の不透明化」。もう一つは、税負担の増大による販売価格の上昇に伴う「市場競争力の低下」です。
従来の「小口免税」を前提としたビジネスモデルは限界を迎え、緻密なコスト管理と付加価値に基づいた戦略の再構築が不可欠となります。
現地実務から見る「日本から越境ECモデル」の致命的なリスク
現地販売店の立場から申し上げると、価格上昇以上に深刻なのが「顧客満足度の低下」です。
- 「代引き(COD)」決済への対応不可
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タイ市場では依然として「代引き」が主流です。直送モデルではこの決済手段をカバーしきれず、結果として広告費をかけても成約率(CVR)が上がらないという構造的な欠陥を抱えることになります。
- 通関のボトルネック化
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全件課税が始まると、税関の処理能力が限界に達し、配送リードタイムが大幅に伸びることが予想されます。タイの消費者は「スピード」を重視します。配送遅延は即、低評価とキャンセルに直結します。
実例シミュレーション:コスト30%増が利益をどう直撃するか
実際に、1,500バーツ(約6,600円)の商品を日本から直送した場合、2026年以降に利益がどう変わるのかを試算してみましょう。
- 現在(2025年末まで:VAT 7%のみ)
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- 販売価格: 1,500B
- VAT(7%): 98B(※1,500Bの内税計算)
- 各種コスト: 1,050B(仕入・国際送料・梱包・手数料等)
- 純利益: 352B(利益率 23.5%)
- 2026年以降(全件課税:関税 15% + VAT 7%)
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タイの税金は「商品代+送料」の総額にかかり、さらにVATは「関税を足した後の金額」に加算される「重畳課税」方式です。
- 販売価格: 1,500B
- 関税(15%): 196B(CIF価格1,300B相当と仮定した場合)
- VAT(7%): 105B(価格+関税の合計に対して課税)
- 各種コスト: 1,050B
- 合計コスト: 1,351B
- 純利益: 149B(利益率 9.9%)
【結論】 税制改正により、利益は200B以上(約6割)も消失します。もし、ここからさらに「増えた決済総額に対するプラットフォーム手数料」や「為替変動」を考慮すると、実質的な利益率は5%を切る、あるいは赤字に陥るリスクが極めて高いことが分かります。
現場のリアル:すでに厳格化が始まっているタイ税関の動き
制度の正式施行は2026年からとされていますが、実務上の厳格化はすでに始まっています。
最近のタイ税関では、少額貨物であっても「中身の抜き打ち検査」の頻度が明らかに上がっています。以前ならスルーされていたようなサプリメントや化粧品の小包が、バンコクの郵便局で留め置かれ、購入者(タイ人顧客)がわざわざ税関まで出向いて説明と納税を求められるケースがすでに発生しています。
商品が届かないだけでなく、税関までわざわざ出向き税金を払いに行く。これは、ブランドにとって致命的なダメージです。国内在庫・国内発送であれば、このようなリスクをお客様に背負わせることは一切ありません。
生き残るための唯一の選択:タイ国内在庫モデル
2026年の制度変更を見据え、今後も安定してタイ市場で販売を続けるためには、タイ国内在庫・国内発送への移行が不可欠となります。
しかし、中小規模のメーカー様が単独でタイ法人を設立し、物流拠点やスタッフを確保するのは、コストとリスクの面で現実的ではありません。そこで、私たちが提供する「白大商店」のインフラを活用してください。
実働型パートナー「白大商店」が提供する価値
私たちは単なるアドバイザーではありません。皆様に代わって「タイ現地の支店機能」を丸ごと引き受けます。
- 最短翌日配送の実現
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タイ国内発送のため、関税トラブルによる遅延は一切ありません。
- タイ語による完結型CS
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現場のスタッフが、タイ特有の商習慣に合わせた顧客対応を行い、リピーターを育成します。
- 日本国内取引としての簡便さ
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国際送金の手間や現地の複雑な税務処理はすべて弊社が代行します。皆様は日本国内の銀行口座への入金を確認するだけです。
2025年中に「検証」と「定着」を終えるべき理由
2026年になってから動くのでは、市場の混乱に巻き込まれるだけです。新税制の下では、「免税を前提とした価格設計」は通用しなくなります。
今のうちにタイ国内で課税後を前提とした適正な定価を設定し、実際の販売データと運用実績を積み上げておくことが不可欠です。
そうして準備を終えた商品だけが、新税制が施行された瞬間に、他社が価格改定や物流の混乱に追われる中でも、安定して供給され、選ばれ続ける商品になります。
そのために必要なのは、いきなり大きな賭けに出ることではありません。「この商品は、タイ市場で本当に成立するのか」を、実務レベルで検証することです。
白大商店では、初回6か月間・月額20万円(合計最大120万円)という上限を明確にした形で、タイ国内在庫・販売・発送・顧客対応まで含めた「販売実務の運用」を行っています。
これはコンサルティングではなく、実際にタイ現地で商品を動かし、販売・発送・顧客対応まで含めた実務を通して、価格・需要・運用が成立するかを確認するための期間です。
本サービスは、この「半年間で市場適合性を見極める」という投資判断を前提とした実務委託サービスです。
その前提をご理解いただいた企業様に対してのみ、私たちはタイ現地での販売実務を責任をもって遂行します。

